SYROが考えるブーツフィッティングのテーマは大きくふたつあります。

1 ジャストサイズで痛みのない快適な履き心地
2 「すっ」と自然にバランスよく立てるアングル


1 ジャストサイズで痛みのない快適な履き心地

 フィッティングの大前提、ベースラインの領域です。小指の付け根や舟状骨、くるぶしなど、骨の突起部はアタリが出やすい部分。骨があたると痛くて楽しめないだけでなく、自分がやろうとしている運動もできなくなったりします。
 SYROでは、インナーブーツへのマーキングとセンタリングゲージを用いて足のアウトラインをブーツの中で再現し、アタリが出る突起部や圧痛の出そうな筋肉の膨隆部を把握、リューターによる削りやヒートガンを使った熱加工でクリアにしていきます。※シェルの肉厚や材質に応じて削り/熱加工を選択し、シェルのアナトミカルデザインを極力壊さないようにアジャスト、リモデリングしていきます。

 よくありがちなのが、1サイズ大きいものを選ぶこと。たしかに購入時はアタリが少なくなるのでそれでよし、となるのでしょうが、使ってみるとクツが大きすぎて隙間があるためレスポンス性に欠け、しかも前後に動いてしまうために結果的に突起部をゴリゴリしてしまって、痛みがが発症してしまうこともよくあります。


 2 「すっ」と自然にバランスよく立てるアングル

 スタティック(静的)/ダイナミック(動的)どちらにおいても「すっ」と自然にバランスよく立てるように、ボトムカント、ニーカント、ランプアングル、フォーワードリーン(前傾角)それぞれアジャストメントを行います。
 スキーもスノーボードも、角付けをしてその傾いた板の面にまっすぐ(真上:垂直から)荷重することで、ターンのための「たわみ」を作ることができます。真上、つまり荷重方向がスキーに垂直に近ければ近いほどたわみは最大値に近づきますが、たとえば膝関節を屈曲させた際に膝がインエッジよりも内側に動く膝の場合、スキーのたわみ値は最大値よりも少なくなります。それは、ターン弧が大きくなる(スキーが思うようにターンしない)ことを意味し、ターン前半でのスイング量(=ブレーキ動作)を増やしてしまうことになったり、ターン後半に加重が集中して次のターンへの導入が難しくなる、あるいはシェーレンになりやすいなど、様々な問題が生じます。
 小指側に体重が多くかかる人、親指側、踵寄り、つま先寄り、皆同じように立っていても体重が多くかかるポイントや重心の位置は10人いたら10通りです。これを画一的な「ブーツ」という硬い箱に収めたときに、様々な干渉や反発が生じて、スキーに対して「まっすぐ」荷重することができなくなります。
 これは、足幅、母趾球─第2MTP関節─小趾球の位置関係、第2MTP関節─踵骨ライン(足のセンターライン)から見た内側/外側の成分バランス、足部アーチの状態、脛の立ち上がる角度、脛の湾曲度合、筋肉の付き方、脚長差、体形などが複合的に影響するからであり、これらをバイオメカニクス的な観点から評価し、アングルを調整する必要があります。
 SYROでは、重心バランスに影響を及ぼすたくさんの要素を確認し、スキーにまっすぐ荷重できるように足底のアングル(=ブーツカント)と、足元から脛の立ち上がりのアングル(=ニーカント)両方を細かくコントロールしています。


※基礎、フリースタイル、ネイチャー系など、ジャンルを問わずフィッティングしています。ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。また、

まっすぐ荷重するためのダブルカンティング
ブーツカントとニーカント

 スキーにまっすぐ荷重するために、膝の動く方向を調整する技術はいくつかありますが、最近のワールドスタンダードはボトム部にアングルをつけて足の回内/回外をコントロールするブーツカントという技術です。この技術はスキーブーツがまだ革の時代からありました。当時は、カントプレートという楔形のパーツをブーツソールに貼り付け(リフターで挟む)、高くなったコバを削って規格の高さにしていました。今でもカントプレートは使われています。ブーツソールを削るようになったのは最近のことで、2010年くらいから世界のトップレーシングの世界で始まったと言われています。
 SYROでは、いち早くソールカットマシンを導入し、たくさんの調整を行ってきました。特にゼロカントと呼ばれる、ブーツソールからロワシェルの立ち上がりの角度が90度(=傾きは0度)に設定されたブーツが発表されてから、アンダーカント(アウトエッジが立ってしまう状態)となるプレーヤーが増えてしまい、それをきっかけにブーツカントの重要性をより一層感じることになりました。
 自分ではまっすぐ立っているつもりでも、アウトエッジが立っていると、少しイン側に傾けてはじめてフラットになり、ターンするためにはさらに多く傾ける必要が出てきます。いわゆるダイナミックなX脚です。この辺については、別ページを建てて詳しくご説明いたしますが、結果的に、外足のスキーがターンしてこない、シェーレンになるなどの嬉しくない状況になってしまいます。
 そこで、足の底面を回外(場合によっては回内)させるわけですが、ブーツのソールを削るブーツカントとインソールやゼッパを削ってブーツ内部でアングルを付ける方法のふたつがあります。自然に立った時に、X脚なのかO脚なのか、膝蓋骨はどちら向きになっているのか、脛の筋肉の付き方はどうかブーツの両くるぶしにあるカントヒンジはどの程度補正できるか、などから、外部・内部・あるいは両方、どれが良いかを評価し調整していきます。ここを間違えると、逆に扱いにくいものとなってしまうので、この評価は非常に重要です。

 ブーツカントは、加工ができるブーツとできないブーツがあります。トップレーシングのブーツは問題なく可能ですが、レース用と謳っているブーツでも、ソールが2層構造になっているものは加工できない場合があります。

ソールカットマシンでソールを削ります


 

写真は2013シーズンにマリア・リーシュ選手(右)とティナ・マゼ選手が使用していたブーツのひとつ。リーシュ選手のブーツはロワシェルの立ち上げを0.5度、アッパーカフの角度を1度に、マゼ選手はロワの立ち上げを0度にしてある。(グループロシニョールのセミナーにて)