フィッティングとチューンナップ
ブーツチューン、ふたつの領域 その2

フィッティング

 フィッティングのゴールは足がブーツの中でストレスなく、さらに隙間なく納まること。やりすぎて緩くなってしまうと、脛の左右への傾きに比べてブーツの傾きが浅くなるため、運動効率や操作性にも影響が出るので気を付けなければなりません。

 また、ただ納めるというのではなく、「足の運動機能軸」と呼ばれる第2趾のMTP関節と踵の中心とを結んだラインを、ブーツのセンター(※)のラインに合わせる(位置決め)ことで、スキーイング動作の質を高めるスタートラインに立つことができます。この作業をセンターリングといい、これにより、後に行うカンティングなどの調整の際の「基準」ができます。

 ブーツシェルやアッパーカフの加工だけでなく、インナーブーツを加工したりインソールを制作するなど、様々な方法でジャストフィットを作り上げます。

チューンナップ

 チューンナップは、「今の自分の全部」にブーツを合わせる作業で、ゴールはある意味において常に変化し、今もしくは近い将来の自分がより高いレベルでスキーイング動作を行うことができるように、その時々の完全に近いところを求め続けるものです。

 今の自分の全部というのは、次のようなものが挙げられます。

 まず身体的な特徴として、土踏まずのアーチ(低い/普通/高い)、脚部の形(X脚/まっすぐ脚/O脚)、膝下の長さとふくらはぎの位置、ふくらはぎの太さ、脛側の筋肉の大きさ、脛骨の湾曲度合い、股関節の幅、骨盤の角度(前傾/適度/後傾)、各関節の可動性(緩い/通常/固い)、身長と体重、脚の筋出力、体幹の筋出力、それぞれの左右差、そしてケガの有無などがあります。

 また、それらの特徴によって、動く際の体の使い方、関節の動く方向などができあがっているという着眼と理解が必要です。

 そして、プレーヤーのスキルレベルと使うシチュエーション。初級者なのか、上級者なのか。何をもって初級・上級というか条件設定の議論も必要ですが、どんな身体を持ったプレーヤーが、どんなブーツに足を入れて、どんなシチュエーションでそれを使いたいのかを無視することはできません。たとえば、レーシングといっても、草レースレベルなのか、県大会レベルなのか、FIS・全日本レベルなのか、ワールドカップレベルなのかによって、使用されるコースの斜面構成や滑走距離はまったく違い、滑走スピード、セットの振り幅、バーンコンディションなどすべての面で大きく異なってきます。

 次に、今の自分に合わせるブーツの側も特徴を把握していきます。材質的な特性、前側の剛性(材質と形状)、サイドの剛性(材質と形状)、ブーツシェル(ロワシェル)の立ち上げ角度(ゼロカント/約1度)、同サイドスリットの深さ、同バックスリットの有無と深さと角度、アッパーカフの高さ(前/横/後ろ)、アッパーカフの形状(脛の内側の反りの有無)、ランプアングル(本来的には、つま先部の平らな面と踵部の平らな面をつなぐ部分の傾斜の角度のことですが、ブーツ考一般的には、つま先と踵の高低差によって生じる角度を指す)、フォーワードリーン(前傾角)、つま先の向き、ブーツソールブロックの位置(バランスポイントとの関係)などがあります。

 このように、チューナップとは、自分という個別の「条件」に、(ある一定の条件を想定して作られた工業製品である)スキーブーツを合わせて、「理想的」なスキーイング動作を行うことができるようにするものです。

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